岩井銀蔵 作の課題物語『人村』第3話

『人村』第3話

夫・銀蔵が『3年A組-今から皆さんは、人質です』を参考に大切なことを考えさせるため、
私や子どもたちのために作ってくれた物語、『人村』。

第1話の前半では、老人が不思議な力で村人たちに起こる災いから守ってくれたり、
富を得させてくれたりと、村人たちにとっても、うちの子供にとっても良い印象でした。

しかし、後半になると、老人が、村人たちが大切にしている森を
切り倒すことを勧めたことによって、村人たちがその老人に怒るようになり、
うちの子供にとっても老人は悪い印象となりました。

そして、前回の第2話では、老人が村人たちの大切にしている森切り倒すことを勧めのは、
村人たちや他の村の人たちの命を救うためだったことが分かり、
うちの子供の印象は、勝手に老人を悪者と決めつけた村人を悪く思い、
反対に、実は今回も村人たちを救ってくれていた老人を良く思うようになりました。

老人への印象
第1話前半 良い
第1話後半 悪い
第2話 良い

うちの10歳の長男は、第2話を読んで、
「村人たちやオレが勝手に老人のことを悪い奴と決めつけてしまっていた」
「老人に申し訳ないと思った」
「お爺さん、もう一度戻ってきて!って思う」
という感想がありました。

さて、次は、『人村』第3話。
これからどんな展開になるのか、私も分かりません。

私も、いろいろと揺さぶられています。

『人村』第3話

これまで何度も村の人々を助けてきて
村人みんなから親しまれてきた一人の老人。

そんな老人が、ある日、
村人たち全員が古くから大切にしてきた森について、

「あちらの森の木は、村人たちに災いをもたらすから、
すぐに全て切り倒したほうがいい」

…このように老人が言った時には、
村人たちは老人に対する態度を急に変え、
自分たちの大切なものを奪われた怒りや悲しみから、
老人を村から追い出すことにしました。

しかし、実は、
その森がドクキ病という猛毒ウィルスに侵された木でいっぱいで
その木から採れる木の実を食べてしまうと危険な目に合ってしまうということで、
今回も老人は村人たちを守るためだったということを、村人たちは後から知りました。

老人の言動を、勝手に良くないものと決めつけ、
老人の話をしっかりと聞かずに老人を村から追い出してしまった村人たちは
とても後悔しました。

「なんとか、お爺さんに戻ってきてほしい」
「あのお爺さんに謝りたい」
「またお爺さんと一緒に、この村で暮らしたい」
「お爺さん、ごめんなさい」

村人たちは このように強く思いましたが、
老人がどこにいるのか、誰も知りません。

村人たち皆が老人のことや、自分達がしてしまったことに悔んでいる中、
その村のある1人の若者が、ある決意をしました。

「お爺さんを探しに行こう。
そして、直接、お爺さんにしっかりと謝ろう。」

この若者は、さっそく、村を出発し、
まずは隣の村に向かうことにしました。

隣の村といっても、若者たちの村は、大きな山の奥にありますから、
隣の村に行くだけでも、長く険しい山道を3日間かけて歩かなければいけません。

しかも、今の季節は冬ですから、
寒さを我慢して一晩を越すだけでも大変です。

いつも村の贈り物を届けるなどで他の村に行く時には、
一冬を越えて温かくなった春の時期に、
何人もの村人たちが協力をし合いながら
しっかりとした準備をして向かっています。

しかし、今回は一人。

いつもなら村人たち皆で協力をして運んでいた荷物も、
一人では重くてとても持てませんので、

持ってきたものといえば、一人で背負えるリュックサックの中に、
数日間分の食料と水くらいのものです。

でも、若者は、決して、途中で村に引き返すようなことはしませんでした。

「何としても、お爺さんを見つけるんだ!」
「そして、何としても、お爺さんに謝るんだ!」
「疲れ何かに負けないぞ!」
「寒さなんかにも負けないぞ!」

・・・3日後、若者は、やっとの思いで隣の村に辿り着きました。

そして、その隣村の人たち一人ひとりに
老人の手掛かりを聞きまわりました。

しかし、誰も、そのお爺さんを見たものはいませんでした。

3日間も冬の寒い中で山道を歩き続け、
まる1日、村で老人の手掛かりを聞きまわって
疲れ果ててしまった若者は、

その村の川辺に横たわり、眠ってしまいました。

翌朝・・・、

「おいおい、若者、どうしたんだい?こんなところに寝て。」

と、この村の一人が話しかけてきました。

「はっくしょーんっ!!」
起こされた若者は、思わずくしゃみをしてしまいました。

「ほらほら、寒い中こんなところで寝てしまったものだから
風邪をひいてしまったんだね。
お顔もとても赤いよ。熱も出してしまったんだろう。
一体どうしたんだい?」

若者は、この村人に全ての事情を話しました。
すると…、

「そうかそうか、大変だったんだね。
そのお爺さんなら、昨日の朝、この村で見かけたよ。
これから“北の村”に向かうと言っていたから、
今から向かえば追いつくかもしれないね。」

と、老人の居場所のヒントをもらうことができました。

“北の村”は、この村からさらに3日間
歩き続けた場所にあります。

若者は、疲れて風邪をひいた体で、
食料も水も残り少なく大変な状態でしたが、

若者は、それにも負けず、
早速、“北の村”に向かうことにしました。

「急いで歩けば、“北の村”につく前に、
その道のりで きっとお爺さんに会うことができるだろう…」

しかし、村を出発してから、
1日歩いても、2日歩いても…、
老人に追いつくことはできませんでした。

そして、何とか3日間歩き続け、
“北の村”に着きましたが、結局、老人と会うことができませんでした。

これまで合計して約1週間も歩き続け、
風邪の症状は悪化し、若者の体力はもう限界。

村から持ってきた食料や水も底をつき、
ついに若者は“北の村”の道端で倒れてしまいました。

それからさらに1週間後・・・、

若者は、目を覚ましました。
病院の布団の上でした。

若者が道端で倒れてしまった後、
誰かが若者を病院まで運んでくれていたのでした。

若者は1週間、病院で眠り続けたままでしたが、
誰かがすぐに病院まで運んでくれたことと、
病院の先生の適切な処置が幸いして、体力が回復しました。

若者は、すぐにでも、また老人を探しに行きたいところでしたが、
病院に1週間も入院したものですから、その代金を支払わなくてはいけません。

でも、貧乏な若者は、自分の村から持ってきたお金だけでは
到底 足りません。

そこで、若者は、病院の代金を支払うために、
この“北の村”で働くことにしました。

若者は、老人に会いたい一心で一生懸命に働いたため、
1ヶ月で入院代を稼ぐことができ、
また、週週間分ほどの食料や水を買うことができる蓄えができました。

また老人を探し始めることができる状態になった若者は、
この“北の村”で、お爺さんの情報を集めました。

すると、この村の一人から、

「そのお爺さんなら、“南の村”に向かうと言っていたよ」

という情報を得ることができました。

“南の村”は、この“北の村”から歩いて2週間もかかる遠い場所。

しかし、今回は、“北の村”で一生懸命に働いて
多くのお金を稼ぐことができたので、
途中の他の村に立ち寄りながら進むことができたので、
安全に“南の村”まで辿り着くことができました。

“南の村”に辿り着いた若者は、
早速また老人の手掛かりを聞きにまわったところ、
なんと、すぐに、老人の居場所を知っている人と会うことができました。

「あぁ、そのお爺さんなら、あの大きなお屋敷にいるよ」

これを聞いた若者は、大変喜びました。

自分の村を出発してから約2ヶ月の間 老人を探し回ってきて、
ようやく老人の居場所を知ることができたのです。

若者にとっては、この2ヶ月間、色々なことがありました。

・夜の山道では、物音がするたびに恐怖で怯えていました
・山道を進んでいた毎晩、翌朝までは危険で身動きもとれず寒さに耐えるのに大変でした
・隣の村では川辺で寝てしまった間に、食料を半分 盗まれてしまいました
・北の村に向かい途中にすぐに老人に追いつくはずが、会えずにとても不安でした
・北の村に着く前には、全ての食料や水が無くなり、飢えて死にそうになりました
・北の村で倒れたときにケガをしてしまったヒジがまだ痛みます
・入院代を支払うために働いた1ヶ月の仕事は、朝早くから夜遅くまで毎日休みなく本当に大変でした
・この南の村まで着く間の2週間もとても大変でした

でも、これらは、老人に謝りたい強い気持ちで乗り越えることができたのです。

若者は、走って、老人がいると言う
そのお屋敷に向かいました。

お屋敷に着くと、老人がお庭でお茶を飲んでいる姿が見えました。

若者は、老人に向かって叫びました。

「お爺さん!山奥の村のものです!
お爺さんに会いたくて、こちらまで伺いました!」

すると、老人は、

「こちらにお入りなさい」

とお屋敷の応接間に若者を案内しました。

若者は、これまでのいろんな気持ちが一気に溢れだし、
たくさんの涙を流しながら、老人に一生懸命に話をしました。

「お爺さん、僕たちのためにたくさんのことをしてくれていたのに、
そんな僕たちが、恩人のお爺さんを村から追い出すようなことをして
本当にごめんなさい。

守り森の木を全て切り倒した方がいいと教えてくれたことも、
それを素直に聞かない僕たちの代わりにお爺さんが切り倒してくれてことも
全部僕たちのためだったんですよね。

お爺さんは、せっかく僕たちを守るために教えてくれたことを
僕たちの勝手で しっかりと話を聞かなくてごめんなさい。

村人たち皆、とても反省しています。

もう、二度と同じ失敗を繰り返しはしないので、
どうか、村に戻ってきて下さい。」

老人は、若者の話を黙って聞いていました。

その後、しばらくして、老人が若者に話し始めました。

「はっはっは。愉快、愉快。

あの村人たちも自分達の失敗に悔いているんだね。

これで自分達がしたことが、どれほど愚かなことか分かっただろう。

それに、今頃はもっと大変な目にあっているはずだ。
先月には周りの山から猛獣がやってきて、
多くの農作物を食い荒らしているはずだからね。

その猛獣にやられてケガをした村人もいるだろうね。
食べ物が荒らされて空腹に苦しんでいるものもいるだろうね。

あー、愉快、愉快。ざまぁみろだな。

君もこの2ヶ月間は大変だったんじゃないのかい?

疲れ・痛み・恐怖・不安・緊張・苦痛…
いろいろな目に合っただろう。

わしは何でも知っている。
何でも見える。
何でもできる。

実は、わしは あの村を出てから、ずっとこの屋敷にいたんだ。

ここから君が困っている様子を楽しんで見ていたんだよ。

君は隣の村で寝ている間に食料を盗まれてしまったことがあったな。
…あれは、わしが仕組んだことだ。

その翌朝、わしは北の村に向かったという話を受けたな。
本当は、わしは ずっと この南の村にいたのに。
…これも、わしが仕組んだことだ。

あと、君は風邪を引いたこともあったな。
そして、北の村で力尽き、病院に運ばれた。
…これも、君に風邪のウィルスを仕込み、わざと倒れさせ、
多くの費用がかかる病院に送り込むことを仕組んだのも、このわしだ。

君の困った様子を見ているのは、楽しかったなぁ 」

この老人の話を聞いた若者は、驚きながらも、
真剣に話を返しました。

「そうだったんですか。

でも、僕たちは、お爺さんにそれほどの報いを
受けなければならないくらいの重大な失敗をしてしまいました。

これほど、お爺さんが怒るのも当然だと思います。

僕たち村人は、お爺さんからの話を都合の良いことだけを信じ、
自分達にとって都合が悪くなると、恩を仇で返すように
お爺さんを追い出したのですから。

この罪は、とてつもなく大きいです。

これから僕たち村人は、どんな罰でも受けます。

僕たち村人や他の村の人たちの命を
森のドクキ病から守ってくれた お爺さんからの恩を
一生忘れずに生きていきます。

これは、村人全員、同じ考えです。

お爺さん、どうか村に帰ってきて下さい。
そして、僕たちに失敗を償わせて下さい。 」

この若者の話に対して、老人も話を返しました。

「そうか、そうか。

でも、君は大きな勘違いをしている。

べつに わしは、君たちに怒ってなんかいない。

もちろん、わしが受けた仕打ちに対する仕返しなんかでもない。

わしは、ただ それらを見て楽しむためにやったんだよ。

この屋敷には わしの本当の仲間も住んでいるんだがな…、

君たちの困っている様子を仲間みんなで見ながら飲むお酒は
最高に美味しいんだよ。

…わしが なぜ、ある山にルビーやサファイヤが
含まれていることを知っているのか、考えたことはあるかい?

正解は、わしがルビーやサファイヤを山に埋めたからさ。

…わしが なぜ、翌年に干ばつが来ることを知っているか、
考えたことはあるかい?

正解は、わしが しばらくあの村に雨が降らないように
雨雲を操作したからさ。

あの村に怒った災いは、全て わしが仕組んだことなんだよ。

その仕組んだことを わし自身が予言したり回避したりすることで、
君たちは わしのことを正義のヒーローのように拝む。

たまらなく面白かったね。
たくさん仲間で笑わせてもらったよ。

君たちの踊らされている様子は、
わしたち仲間の最高の酒のつまみだ。」

若者は、この老人の話に対して、
あまりの衝撃のために頭が真っ白になり、
もはや一言も発することができませんでした。

そして、老人は、最後に、
追い打ちをかけるように若者に言いました。

「そういえば、ドクキ病のことだけどね…。

あれも わしが仕込んだウィルスだよ。

君たちが大切にしていたものを侵された気持ちはどうだい?

はっはっは!

・・・わかったなら、すぐに あの村に一人で帰りなさい。」

若者のほっぺたには、先ほど老人と会うことができた時の涙とは
全く違う大量の涙が流れていました・・・・・・。

第4話に続く。

>夫・岩井銀蔵の妻として

夫・岩井銀蔵の妻として

小さい頃から私は、「毎日学校の人たちとすれ違うだけで緊張する」「運動会は人が多いから大嫌い」「電車に乗るのはいつも誰かに見られているような気がして怖い」と、とても生きづらい毎日を過ごしてきました。それは大人になっても変わらない日々が続きましたが、夫や家族たちの支えのおかげで、私は私の“夢”を持つことができるようになりました。
これまでは家計も育児も夫に頼りっぱなしでしたが、これからは「本当の生きる力」を養って、夫と同じようにたくさんのラッキーを作っていきたい!・・・このように考え・行動できるようになったのは、やはり夫の“厳しい愛”の力が大きいのかもしれません。
いつも家族や皆の夢の応援をしてくれる夫に対し、私も微力ながら夫の夢を応援したいと思っています。夫・岩井銀蔵のブログも宜しくお願い致します。

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